2008年4月1日火曜日

「靖国」上映 全館が中止 東京、大阪「右翼抗議の可能性」

靖国神社を題材にしたドキュメンタリー映画「靖国 YASUKUNI」上映を東京・新宿の映画館が中止した問題で、十二日から公開を予定していた東京と大阪の四つの映画館がすべて上映中止の方針を決めたことが分かった。表現の自由を自ら狭める行為に批判と戸惑いの声が上がっている。
 銀座と渋谷にある都内の二館は上映中止を正式に決めた。銀座の映画館を経営する興行会社ヒューマックスシネマ(東京)は「抗議活動などで近隣の商業施設やお客に迷惑が及ぶ可能性があると判断した」と説明する。
 東京と大阪の二館の上映を見送る方針を三十一日に決めた興行会社エスピーオー(東京)も「都内で単独上映となると、非難がうち一館に集中し、お客さんに迷惑が掛かる」と説明する。
 一方、この映画の宣伝を担当する配給・宣伝会社アルゴ・ピクチャーズ(東京)の宣伝担当者は「長年この仕事をしているが初の事態」と戸惑いを隠さない。
 こうした動きに、六月ごろの上映を計画していた札幌市内の映画館の担当者は「東京で上映ができない場合、全国公開の時期や上映館などすべてを仕切り直すのが一般的。配給・宣伝会社と協議して決めるが、札幌だけ上映ということには多分ならない」と話し、計画を再検討している。
 日本映画監督協会(崔洋一理事長)は三十一日、上映中止の拡大に「大きな危惧(きぐ)を抱かざるをえない」とし、内容が「反日的」と文化庁を通じ試写会を要求した国会議員の言動に抗議の声明を発表した。
 映画「靖国」は軍刀「靖国刀」を作る刀匠を軸に、軍服姿で参拝する人や追悼集会に抗議する若者など終戦記念日の靖国神社の光景を描いた作品。自民党の政治家らが、この映画に文化庁の所管法人から助成金が出ていることを問題視。国会議員向けの異例の試写会が開かれた経緯がある。

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